昨年と違い新型コロナはGW明けに流行爆発はしていないようですが、若干の増加傾向となっております。
溶連菌感染症と劇症型溶連菌について
致死率が3割に上るともいわれる劇症型溶血性連鎖球菌感染症が、いま過去最多のペースで急拡大しています。
一般的な溶連菌感染症は発熱と喉の痛みが主な症状で、治療しなくても数日で良くなることがほとんどですが、ごくまれに急激に悪化し数時間で死に至ることもある劇症型という病態になることがあります。早期の治療開始が生死を分けるのですが早期に発見することが難しいため治療が後手になりやすいのが実状です。
そのため予防が大切となってくるのですが、通常の溶連菌感染症自体が2023年10月以降感染者が急増しており、過去10年間で最悪となっております。ちょうどCOVID-19の対策緩和と流行の拡大が重なっており、特に小児でマスク手洗いの頻度が激減したことが大きな原因と考えられます。最近になって再度流行しておりますので、劇症型への移行を防ぐためにも子供も大人も密な状況でのマスクと手洗いをきちんと行うことが大切です。
アメリカでの鳥インフルエンザの流行
アメリカで2人目の乳牛からのヒト感染例 高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)の現在の状況(忽那賢志)
先日も鳥インフルエンザ(H5N1)の人への感染が世界的に散発している件を投稿しましたが、アメリカでは現在鳥インフルエンザが乳牛、ヤギ、猫などの哺乳類へ感染したことが確認されており、2例乳牛からヒトへ感染しています。
鳥インフルエンザはこれまで全世界で800例ほどヒトに感染しており、致死率50%にも達する非常に毒性の高いインフルエンザです。今のところアメリカでの感染例は軽症で、ヒトからヒトへの感染も確認されていませんが、このまま鳥や哺乳類からヒトへの感染例が増えるとウイルスが変異してヒト-ヒト感染する新種が出来る可能性が高まり、再度のパンデミックになることもあります。日本では現在感染は下火で、鳥以外の動物への感染も確認されていないため国内で直ちに何か対策をする必要は今のところありませんが、死んだ鳥には無闇に近づかないようにしておきましょう。
百日咳の流行
「百日咳」患者が宮崎などで増加中! 中国では6万人が感染「長引く咳に注意して」(Medical DOC)
百日咳の患者、欧州で急増 中国と米国の一部でも | Forbes JAPAN
今年に入ってからヨーロッパや中国で百日咳の患者が急増していましたが、海外旅行客が増えていることなどからついに日本でも感染者が増加してきました。
百日咳は百日咳菌による感染症で、時には吐いてしまうようなしつこい咳が2-3ヶ月続く特徴です。とはいえ吐くような咳の人も半分くらいで、他にはっきり百日咳と区別できるような症状は無いため診断が遅れがちなのが実状です。
百日咳はワクチンで8-9割発症を予防できるのですが、ワクチンは10年程度しか効果が続かないため日本では思春期や成人期以降の発症が増えてきています。アメリカでは幼児期に打ったワクチンの効果が切れる12歳前後で百日咳のワクチン(と、ジフテリアと破傷風の3種混合)を追加で打つことが推奨されており、日本では11-12歳になぜか百日咳だけ無くなった2種混合が定期接種になっておりますが、余裕があればそのタイミングで2種混合ではなく3種混合を打っておくのが望ましいでしょう。
公衆衛生としてのユニバーサルマスク
新型コロナウイルスのワクチンが普及して以降「もう感染対策はしなくてもよいんだ」という誤解が広まっていますが、昨年末のインフルエンザや溶連菌の感染爆発で分かったようにあらゆる感染症は我々の身近にいて、常に人間の隙を伺っています。人と人との距離が近かったり換気の悪い状況でしっかり全員がマスクをすること、要所要所できちんと手を洗うこと、具合が悪いときは外出しないことがあらゆる感染症を防ぐことに繋がります。