糖尿病診療ガイドライン2024の変更点-食事療法編-

糖尿病診療ガイドライン2024

糖尿病診療ガイドラインの2024年版が発行されました。今回5年ぶりの改定ということで色々な変更点があるのですが、今回は食事療法の変更点について説明いたします。

新規の推奨項目

食事療法の項目では以下が新規に提案されています。

  • 2型糖尿病患者の血糖コントロールに糖質制限食(ただし6~12カ月以内)が有用である。
  • 2型糖尿病患者の血糖コントロールに低GI(グリセミック指数)食が有用である。
  • 2型糖尿病患者の血糖コントロールに積極的な食物繊維摂取が有用である。

このうち当院でも勧めている糖質制限食(当院では軽めの糖質制限ですが)と食物繊維については軽めに触れるにとどめますが、食物繊維は水溶性と不要性に分けられ、血糖値を改善するのに有用とされているのは水溶性の食物繊維です。水溶性の食物繊維は海藻・野菜・きのこなどに含まれますが、血糖値を改善するには1日8-10g前後摂ることが望ましいとされ、効率的に摂取するには未精製の穀物が有用です(例えば大麦には200gで9g弱の水溶性食物繊維が含まれています)。こちらも当院通院中の方にはおなじみの知識ですね(くどくてスミマセン)。

低GI食、有用とはなっているけれど…

2024年のガイドラインから推奨になった低GI食、以前は血糖改善に否定的な研究が多かったため当院では非推奨としておりましたが、今回のガイドラインを詳しく読み込んでみても

2型糖尿病において高GI食と比較し、低GI食群ではHbA1cが有意に低下していた.低脂肪食と比較し低GI食では20週と40週でともに有意に低下するとの報告,高食物繊維と比較して低GI食では有意に低下するとの報告があった.

と、好意的な研究結果がある一方で、

一方で,高GI食群と低GI食群のHbA1c低下に有意差はなかったとの報告もある.高炭水化物・高GI食,低炭水化物・低GI食,低炭水化物・高一価不飽和脂肪食の教育,それぞれで血糖コントロールに違いがなかったとの報告や炭水化物置き換え食と比較し低GI食で有意な低下を認めなかったとする報告もある。

朝食に低GI流動食を提供したRCTでも有意なHbA1cの低下は認められなかった。低GIデザートの意義を検討した研究では,共通の低カロリー食を提供したうえで,週4回提供した低GI食/低GIデザートを摂取する介入群と週1回好きなデザートを摂取する対照群で血糖コントロールに対する効果が検討されたが群間で有意差はなかった.

いずれも「糖尿病診療ガイドライン 2024」日本糖尿病学会 編より

と、否定的な研究が多いことも記載されています。

結論としては、“低GI食で確実に血糖が良くなるわけでなはないけど選ぶのは自由だし明らかに有害なわけでもないからオススメしとくよ”、くらいのニュアンスでした。

当院的には「低GI食もいいけど、もっと重要な気を配るところが他にあるからそっちに力を入れてね」というスタンスです。

要検討な項目

また、十分な根拠がまだ揃っていない提案として以下が挙げられていました。

  • 血糖コントロールに対する果物摂取の影響は十分に確認されていない。
  • 人工甘味料の血糖コントロールに対する影響は十分に確認されていない。

こちらについても1つずつ検討していきましょう。

糖尿病と果物

ガイドラインでは以下のような結論になっています。

果物は糖質だけでなく食物繊維を含有し,GIが低いことから,血糖コントロールに影響を与えない可能性があるが,現時点では血糖コントロールに対する果物の影響は十分に確認されていない.

ですが、理由を詳しく見ると「果物の摂取の有無を比較した研究の数が少ないこと」はまだ分かるのですが、「果糖飲料(つまりジュースです)の摂取は血糖コントロールを悪化させる可能性が指摘されている」と、果物の話をしているのにジュースを理由にしているという悪意があるとしか思えない記載になっております。

当院では「少なくとも果物そのものを食べることで血糖コントロールが悪くなるわけじゃないし、ビタミンとミネラルと食物繊維が摂れるから食べても問題ない。ただしジュースは不可」というスタンスです。

糖尿病と人工甘味料

人工甘味料(非栄養性甘味料)とはサッカリン・アスパルテーム・スクラロース・ステビアなどの、砂糖と比べてエネルギーが低い甘味料のことです。砂糖を人工甘味料に替えるといかにもカロリー制限が出来そうなイメージがあるのですが、実際に糖尿病患者さんを人工甘味料を食べる群と砂糖を食べる群に分けてみたところ、なんと体重もHbA1cも有意な差がなかったという研究結果が出ています(このことは別の機会に詳しく紹介する予定です)。

他にも体重やHbA1cも減ったという報告と増えたという報告が両方混在しており、結論が出ていません。また、興味深い報告として、人工甘味料は腸内細菌叢を変化させて血糖値が悪化するというものがあり、カロリーが少ない分腸内細菌の変化でプラスマイナスゼロになってる可能性もあります。

これまでの研究では人工甘味料の違いなどは加味されておらず、いずれにせよさらなる研究が必要な分野ではありますが、当院では「清涼飲料水や砂糖を摂るよりは人工甘味料で代替したほうが良さそうだが、血糖や体重に変化がないという報告も多いし、結局甘いものを食べ慣れているという状況は変わらないので、人工甘味料否定はしないが徐々に止めたほうがいい」というスタンスです。

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