このたびの能登地震で被害に遭われた皆様に慎んでお見舞い申し上げます。被災地の皆様が早く安心して過ごせる日々が戻りますよう、微力ながらお祈りしております。
被災地と感染症
災害発生時の2次災害として怖いもののひとつに感染症があります。今回もすでに避難所で新型コロナやインフルエンザが小流行しつつあるようです。被災地では不衛生な環境・人口密度の高さ・体力免疫力の低下などから普段よりも感染症が流行しやすく、また、一度流行すると人数や薬剤など医療体制が脆弱なことや基礎体力が落ちていることから重症化しやすくなるため特に途上国では深刻な問題になることが多いです。
そのため予防注射で予防できる病気は普段からワクチンを打っておくことが大切です。ワクチンは防災対策でもあるのです(なので自治体はなるべく補助金を出してください)。
破傷風はどこでも感染する
災害時に危険性が叫ばれる感染症の一つに破傷風があります。錆びた釘を踏むと…と言われているように破傷風菌は酸素の乏しいところで繁殖しやすいので、確かに庭いじり・泥まみれの傷・動物の牙や爪などの怪我などで特に気をつけた方がいいのですが、実はそれだけでは全然安心できません。
実は破傷風は理論上あらゆる傷で感染する可能性があります。今まで私も3例ほど破傷風の症例を経験したことがありますが、3人ともアスファルトでの擦り傷が原因でした(交通事故で地面に落ちたとかではなく、散歩中転んで頭を打った程度の怪我です)。さらに、これまでの統計でも破傷風患者の3割は体に傷がなかったようです。
なんと死亡率は20-30%
破傷風の症状としては映画「震える舌」などが有名ですが、口が開きにくくなることや全身の強ばり・痙攣が代表的で、全身の神経がうまく動かなくなるため、特に自力での呼吸が出来なくなります。
集中治療が発達した現代では破傷風の死亡率はだいぶ下がってきましたが、それでも20%前後と言われており、人工呼吸と1ヶ月前後の長期の入院が必要です。
予防はワクチンのみ
そういう怖い破傷風ですが、ワクチンでしか防げません。「ふだん仕事や庭いじりで泥に触れてるから免疫が付いている」などということは全くありません。破傷風に対する免疫は劣化しやすく、きちんと免疫をつけるにはまず初めに3回ワクチンを注射して基礎免疫を付けてから、さらに10年ごとに1回追加の注射が必要です。
特に1968年以前に生まれた人は最初の3回のワクチンが義務化されていないため非常に破傷風に脆弱な状態です。庭いじりが趣味の人・ペットを飼っている人・建築系の人はもちろんですが、全ての人に3回の接種を今すぐオススメします。
また、子どもの時に3回打ったことのある人でも、過去10年以内に追加のワクチン注射をしていない人(ほとんどの人がそうだと思いますが…)も免疫が落ちているので追加の注射をしておきましょう。10年ごとに1回打っておけば安心です。