5類になると今までより診療できる医療機関が増える?→絶対に増えません!
今年もよろしくおねがいします。
新型コロナウイルスの感染状況はようやく第8波も山を超えた印象がありますが、まだ高齢者施設やワクチン未接種者の多い小学校などでのクラスター発生が散発しています。また、アメリカでXBB1.5株の流行が増加していることや、感染爆発中の中国からこれから春節で来日する観光客が増えることなどからまだまだ予断を許さない状況です。救急車の出動件数および搬送までに要する時間も過去最高を更新し続けており、コロナ以外の病気でも治療が遅れる可能性が高い状況が依然として続いています。
そんな中、新型コロナの分類を2類相当から5類に下げようという話が本格化してまいりましたが、報道では政府の言いなりになっているような都合の良い話しか聞こえてきません。今回は5類に変わると何が変わるのかについてご説明していきます。
まず、意図的に混同して報道されていますが、感染症の分類で変わるのは検査や診療の体制だけであり、マスク着用義務やワクチン費用は全く別の法律の話です。
また、大前提として新型コロナウイルス自体の感染性や病原性は法律の扱いが変わっても何も変わりません。なので、新型コロナウイルス感染が予想される方は一般の患者さんから隔離した場所での診察が必要になりますし、入院中は他の患者さんと隔離した状態での管理が必要になります。そのうえ、5類相当になると新型コロナの入院用に空きベッドを確保するなど医療機関に課せられていた色々な義務が無くなります。なので、
今まで診療していなかった医療機関→「やはり感染予防が出来ないので無理です」
今まで診療していた医療機関→「使命なので続けます」or「義務じゃなくなったので止めます」
という結果にしかならないので増えるはずがありません。医療機関には応酬義務というものもありますが、診療体制が不十分な状態で診療する義務はありません。当院も5類になっても引き続きかかりつけの方のみに限って新型コロナの診療は継続する予定ですが、対象の拡大は難しそうです。
検査費用について
今までは発熱外来を受診すると新型コロナの検査費用など大部分が公費で賄われていましたが、5類になるとこれがなくなります。
ですので3割負担で3000円前後だった受診費用が5000円前後まで高くなります。また、これまで開設されていた発熱外来や公的の検査センターも縮小されます。
治療費用について
こちらも今まで全額が公費負担だったのですが5類になると全額保険診療になります。重症化を予防する薬は3割負担ですと内服薬で3万円、点滴だと10万円ほどになります。また、入院費用も高額医療費を使っても20-30万円ほどになると予想されます。無料の宿泊施設なども無くなります。
入院調整について
病院は新型コロナの入院用にベッドを確保する義務が無くなりますし、病院をまたいでの入院調整を保健所が行わなくなります。
ですので、他の病気の人でベッドが埋まっていたら入院を断られますし、他の入院先を探すことがこれまでよりも困難になります。
経済支援について
感染拡大時の補償金や給付金なども無くなります。
隔離について
自宅療養の要請が無くなりますので、感染力が残っている間に外出する人が今までよりも増え、職場やレストランなどで感染者との接触機会が増えます。
繰り返しになりますが無料の宿泊施設なども無くなりますので自宅内での隔離も今までよりも難しくなります。
診療について
一部の新聞や政府広報では「5類になると診療できる検査機関が増える」などと喧伝しておりますが、新型コロナウイルスの診療に限りがあるのは「一般の患者さんに感染させないような体制を構築するのに限界があるため」なので、法律が変わっても感染性に変わりがなければ今までと同じく診れません。
(「今日からヤクザから半グレになったので仲良くしてね」と言われても「知らんがな…」という感じです)
また、これまで保健所が探してくれていた入院先を自前で探さないといけなくなるなど手間だけ増えますので確実に今より受診の門戸は狭まると思われます。
救急逼迫について
発熱外来が無くなりますと救急車を呼んだ場合に発熱や風邪症状があるとこれまで以上に搬送できる病院が少なくなります。
結果、救急車の出動率が上がり、交通事故や心筋梗塞など他の病気の人の治療が遅れる可能性が高まります。
結局どうなるのか
以上の通り、どうも「検査や診療の費用にこれ以上税金を使いたくない」という政府(財務省)の思惑が根底にあり、報道もそれに追従しているだけのように思えてなりません。私としては「自分の身は自分で守れ。政府は関知しない」という宣言にしか聞こえませんでした。
徐々に公費の割合を減らして経済も回していくこと自体は自分も賛成なのですが、あまりに拙速です。「どこに感染者がいるか分からないし、万が一かかったら治療費も高くなるから外食や旅行に行くのはなるべく控えようかな…」とならないでしょうか?少なくとも自分はそう考えています。
また、屋内でのマスク着用解除とワクチンの費用負担化については全く理解できません。新型コロナウイルスは症状が出る2日前からウイルスの排出が始まるので症状のない人も全員マスクをするユニバーサルマスクは極めて安価かつ有効な対策なのはこれまでのデータからも明らか(ついでにインフルエンザなど他の感染症もかなりの割合抑えることができます)ですし、入院患者を減らす費用対効果が極めて高いワクチンも有料化してしまうと低所得者層から死亡率が高くなります。
5類への変更がどういう結果を生むのか、ゴールデンウィークあたりにくる第9波で明らかになると思われます。