野菜と果物を多く食べようというのは当院でも一般的にもよく言われていますが、実際にどのくらい食べるとどのくらい死亡率が下がるのかという研究が発表されましたので紹介します。
https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.048996
最初にサービングというアメリカではポピュラーですが日本では馴染みのない単位について説明しますが、果物だと自分の握りこぶし大が1サービング、葉物野菜は体積1カップ、その他の野菜は1/2カップが1サービングだと思ってください。
さて本題ですが、今回の研究ではアメリカ人12万人を最大30年間追跡して、食事と死因との関係を調査しました。
野菜をしっかり摂る人と摂らない人で死亡率が15%も違う
結果、果物と野菜を1日あたり5サービング摂取すると死亡率が最も低くなり、それ以上摂取しても死亡率はさほど変わらないことが分かりました。
内訳を詳しくみると、果物を1日2サービング、野菜を1日3サービングほど摂るのが最良の結果でした。特に果物は取りすぎると逆に死亡率が上昇してしまうようです。
ただし、トウモロコシやジャガイモやエンドウ豆などデンプン質の野菜と野菜ジュースの摂取量は死亡率とは関連がありませんでした。
特に呼吸器疾患で野菜と果物の効果が大きい
死亡率の内訳を見ると、特に呼吸器疾患で死亡率が大幅に下がっていました。逆に、神経疾患(認知症など)の死亡率はさほど変わらないという結果でした。ただし、これは死亡率だけを見ているのであって、野菜や果物を食べても認知症が予防できないということではありません。
以上が論文の抜粋です。
私見
野菜と果物は積極的に摂るべき、ただしデンプン質の多い野菜は控える、というのは当院でも繰り返し主張してきたことですが、この主張がさらに研究で裏付けられました。ただ、野菜ジュースは何も摂らないよりはマシな程度だと思っていたのですが、本当に死亡率に対して全く差がみられなかったのには驚きました。少し指導内容を改める必要がありそうですね。ひょっとしたら無添加の野菜ジュースに限ると効果があるかもしれませんが、今回の研究ではそこまでは分かりませんでした。
また、ガンは発症に時間がかかるものもあるため因果関係を推定するのがなかなか難しいのですが、この研究ではかなり長い間追跡調査できているのでガンとの因果関係もそれなりに信用できそうです。
どうしても食費を節約したり外食などで簡単に済ませようとすると炭水化物が多めの食事になってしまうのですが、頑張って果物と野菜を増やしていくことが健康への第1歩ですね。