久しぶりに食事の話題です。
今年はコロナ太りした方が大勢いらっしゃると思いますが、食欲の秋に向けて間違ったダイエットをしないように、ベジタリアン食に関する最新の研究を2つご紹介します。
1つ目は、一口にベジタリアン食といっても健康に良いものと悪いものがあり、特に肥満の方で食事による影響が大きいことがわかった研究です。ギリシャの健康な一般成人を対象に食事の内容をアンケート調査し、その後10年間でどのように健康状態が変化していくかを追跡調査したATTICA研究というものがあります(ギリシャらしいネーミングですね)。
すると、同じベジタリアン食でも健康的な食品群を食べていた人達と不健康な食品群を食べていた人達ではその後10年での高血圧・脂質異常症・高血糖になる割合に大きな差が出ていたことが明らかになりました。
当院通院中の方にはお馴染みですが、健康的な食品群とは全粒穀物・果物・野菜・ナッツ・オリーブオイル・コーヒーなどであり、未加工の食品が多く含まれていました。逆に、不健康な食品群は野菜/果物ジュース、清涼飲料水、精製された小麦粉を使ったパンやパスタ、ジャガイモなどでした。また、ベジタリアン食とは別に菓子を食べていた人達も検査値異常になる確率が高かったです。
これまではベジタリアン食は”肉以外の食品”と定義される傾向にありましたが、この研究だけではなく他の様々な研究からも、”植物性の食品”にも健康に良いものと悪いものがあることが最近明らかになってきました。
また、肉類を避けることだけに集中していると加工された炭水化物を今までより多く摂取する可能性があり、体重を減らすことが難しくなります。肉や野菜だけにこだわらずに、ナッツや魚介類などから良質な蛋白質を摂取し、炭水化物の過剰摂取を避けることが大切ですね。
2つ目は、ベジタリアン食とメンタルヘルスとの関係です。ベジタリアンの人達は肉を食べている人にわざわざ文句を言ったり、なんとなく精神的に不安定なイメージを持っている人もいるかも知れませんが、これまで一貫した研究結果は得られていませんでした。そこで、複数の研究を比較してみた研究がこのたび発表になりました。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10408398.2020.1814991
ベジタリアン食とメンタルヘルスの関係を調べた13件の研究を比較した結果では、ベジタリアン食でうつ病が増えたり、もしくはベジタリアン食で不安症が増えるといったことは認められませんでした。ベジタリアン食とストレスの関連は今回の研究では分かりませんでした。
野菜だけ食べているとイライラしやすい可能性はまだ残されていますが、少なくとも肉を食べないとうつ病や不安になる、ということはなさそうですね。